遺していくよ
呪いの言葉を
「やだっ!ねぇ・・ねぇっ・・・」
染み付いた紅が、雨に流されていく
消えない紅が付いた手で、温かさを失っていく身体を抱き抱える
「政宗様!政宗さま・・っ」
「泣くなよ、らしくねぇな・・・」
「ごめんなさい、ごめんなさい・・わたしのせいで…」
なるほど
こいつが少し気を抜いた時を、敵が見逃すはずもなかった
気が付けば勝手に体が動いて、背中を守ってやったんだ
だから俺が斬られた
道理で体が動かない
せめて指だけでも動けば、驚くほど取り乱しているこいつの涙を拭ってやれるのに
「応急処置だけじゃ間に合わない…!!
今ひとを呼んで来ますからっ」
「行くな」
離されそうになった腕を掴む
「政宗さま政宗さ・・・っ」
声にならない声でひたすら呼ばれて
涙は止まり方を忘れてしまったかのように流れてくる
痛いはずなのに
どうしてか心地好い
「泣くなよ、らしくねぇよ」
まさか彼女が俺のためにこんなに泣いてくれるとは
あぁ、本当に
体が動かないのが残念だ
力一杯抱き締めて
真っ赤になるまで愛を囁いてやりたいのに
世界が遠退いてきた
こいつのくしゃくしゃな顔が霞んで見えない
「やだ!政宗さま
逝かないで…」
声が遠い
きっともう時間はないから
「…紗羅、愛してる」
遠くで彼女が何か叫んだような気がした
わたしも、愛してる
(伝えられなかった想い)
(最後に笑ったのは、貴方)
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